見出し 現在地→ 参集殿  作:夜桜 季折

 

+ 「終唄」

 

帰ってくるとその言葉 私はずっと待ちましょう
春日暮れの境内で 私を抱いたその腕(かいな) その温もりを待ちましょう
赤札一枚握り締め 出向いたあなたに一輪の 牡丹一華を送ります

 

終わり迎えて幾歳か 今でも私は待ちぼうけ
秋夕暮れの空の下 町の光の届かぬ社(やしろ) 今でも一人 待ちぼうけ
風の噂は神風と それでもあなたに一輪の  深山黒百合奉げます

 

白蛍積もる神渡し 白い私はただ一人
春日暮れの境内で 帰ってくるとその言葉 今でも私は待ちぼうけ
永き光陰思慕を積み 遠いあなたに一輪の 勿忘草を残します

 

あなたを信じて、ずっと待つわと送ります 狂おしい恋を奉げます
永い時の終わりのここで 勿忘草を 残します

 

 

 

 

 

 

「終唄」 ―完―

 

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