見出し 現在地→ 参集殿  死を忘れるな

 

+ 未来の私へ
挿絵

 

白の箱の中、唯一外と繋がっている窓からの景色、それを見ている私。
私の心音を奏でる電子機器と、それを映し出す液晶画面、―それを見ない私。

 

未来の私がどんな姿だったとしても、もしあなたがそこに生きているのなら、
ここにいた私をただ、覚えてて欲しい。

 

音のない白い箱の中、届かない窓の外の喧騒、それを必死に聴いてる私。
止まりかけの心の音を模した、機械的に鳴る、機械の音。―それを聴きたくない私。

 

止まってしまえ。 世界の時間も、人々の時間も、時の流れも、私以外のもの全部止まってしまえ。

 

止まらないで。 私の音も、私の弱さも、涙も、悲しみも悔しさも夢も孤独も全部、どうか止まらないで。

 

ただ、生きたくて、生きたいって想うこの心が死ぬのが、怖くて、
誰にも看取られず、祝福もされず、応援もされず、心配もされず、誰にも感情を向けて貰えないまま、止まりたくない。

 

ねぇ、覚えていて。

 

そこにいるあなただけが、生き続けているあなたという存在だけが、私の唯一の希望なんだよ。

 

未来の私にはもう逢えないかもしれないけど、もしあなたがそこに生きているのなら、
ここにいた私を、ずっと覚えてて欲しい。

 

 

 

窓の外の音が聞こえなくなって。
心の音を真似していた機械の音が分からなくなって。

 

―ねぇ、覚えていて。

 

見えてたものが遠くなって、色が消えて。
自分の手もよく見えなくなって、どこにいるのかさえ、不安になって。

 

―ねぇ、覚えていて。

 

何も感じなくなる重圧に耐えられない私には、、怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて心がぐちゃぐちゃになりそうな私には、この重圧に耐えて、この怖さに耐えて、この理不尽に耐えてそこに生き続けている私という存在だけが、たった一つの希望なんだよ。 だから―

 

未来の私とはもう逢えないかもしれないけど、もしあなたがそこに生きているのなら、
あなたのことを信じている私がいることを、全力で応援している私がいることを、覚えてて欲しい。

 

未来の私がどんな姿だったとしても、笑えてなくても、幸せになってなくても、
あなたに逢えることをずっと願っている私がいたことを、覚えてて欲しい。

 

 

未来の私にはもう逢えないけど、もしあなたがそこに生きているのなら、
弱虫な私が、怖くて怖くて泣き虫の私が、それでも最後まで胸を張って生きたことを、

 

ただ、覚えてて欲しい。

 

 

 

 

 

未来の私へ ―完―

 

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